三津の目をしっかりと見て不敵な笑みを浮かべた。

2024041200:01

三津の目をしっかりと見て不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「坂本君,すまなかった。戻ろう。これ以上待たせる訳にはいかんな。」

 

 

すっと立ち上がった桂は清々しい顔で部屋を出た。三津はその後ろ姿に三つ指をついて見送った。

 

 

「いやぁ……。坂本の言う通りやな。三津さんありがとう!」

 

 

中岡は助かったと三津の背中を擦った。三津は鼻を啜りながらゆっくり上体を起こした。

 

 

「役目は果たしました……。約束は守って下さいね……。」 https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-90.html https://mathew-anderson.mystrikingly.com/blog/fa68aaeafa9 https://mathewanderson.livedoor.blog/archives/2542500.html

 

 

中岡は分かってると上機嫌で三津の頭を撫でくりまわした。

 

 

「すまん,待たせた。」

 

 

部屋に戻った桂は迷い無く西郷の正面に腰を据えてしっかり顔を前に向けた。

それには西郷も前を向き目を合わせた。

 

 

……我が藩の存続の為,互いの利益の為,今の世を正す為,どうか一つ……よろしく頼む。」

 

 

桂はようやく頭を下げた。その姿に今まで口を開かなかった西郷が言葉を投げた。

 

 

「急になぜ頭を下げる気になった。何か目論んだか。」

 

 

こちらとて仕方なく頭を下げているのに疑われるなど腹立たしかったがそこはぐっと堪えた。

 

 

「しかとこの目で希望を見た。私がやらねばならぬ事,守らねばならぬ物,はっきりと見えたのだ。

今必要なのは過去を恨み自分の矜持を守る事ではない。」 三津を失うよりも怖いものなんてない。それすらも忘れていた。

おまけにまたも自分の行いで三津が大事にしてきたものを壊すところだった。

 

 

何も分からない癖に政に口を出すのが気に食わないと思ったのも愚かだ。その口出しが助言にもなっていたのに。見失ったものを気付かせてくれていたのに。

 

 

久方ぶりに三津と言葉を交した興奮冷めやらないまま,それでも桂は平静を装い凛と澄まして前を見据えた。

 

 

私みたいにならないで

 

 

『三津,それは私の元を離れたのを後悔してるととっていいのかい?』

 

 

意地を張った事を後悔し,本当はまだ気持ちがあるのに後戻り出来なくなっていると解釈していいのだろうか。

早く三津の所へ戻って確認したい。自分でここまで長引かせておいて,早く会合よ終われと心の中で思っていた。

 

 

「まぁまぁ西郷さん。ようやく討幕に動ける。これからは手を取り合って行くんや。後はこの同盟における六つの決めごとを考えたき目を通して同意の署名を。」

 

 

坂本は懐から取り出した書面を二人の間に広げた。ここに来るまで長かった。今日は美味い酒が飲めるなと目を細めた。

その様子を見届けて中岡は静かに三津の元へ向かった。

 

 

「三津さん,話が纏まったき安心し。」

 

 

中岡の報告に三津は安堵の笑みを浮かべた。

 

 

「じゃあ私はこれで……。」

 

 

自分の役目は終わったと三津はゆっくり立ち上がった。

 

 

「ホンマにうちの手配した宿やのうてええんか?」

 

 

「はい,ここで安心出来る場所は一つしかないんでそこに帰ります。新選組には見つかりたくないので。」

 

 

「分かった。そしたら行こう。」

 

 

三津はもう一度桂と顔を合わす事なく中岡と共に小松邸を後にした。

その足で三津は中岡に護衛してもらいながらとある場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

『坂本君,話が長い。長いぞ。』

 

 

もう内容は了承した。署名も済んだ。これ以上ここに居たくない。

 

 

『見ろ。西郷も目を閉じて集中してるように見えるがあれは絶対聞いとらんぞ。』

 

 

早くその事に気付いてくれと桂は坂本に念を送るが,やっとこさこぎつけた同盟に気分が高揚している為に無駄話が止まらない。

長引かせたのは自分にも負があるから桂はただ黙ってこの場を耐えた。

 

 

「じゃけぇこれからは手を取り合ってやって行こう。そしたら今日はこの辺で……。」

 

 

『終わった!』

 

 

桂がカッと目を見開いた時には西郷はすでに立ち上がっていた。向こうもさっさと帰りたかったらしい。そりゃ十日近く無意味な時間を過ごしたようなものだからやっと解放されたと思っただろう。